この記事は、クランクの回転を受け止める軸である、ボトムブラケット(BB)のトラブル対処法とBBの取り外し&交換のしかたについて、二回に分けて紹介する中の後編です。
なんとなくBBってモノはわかったけど、プロじゃないんだからBB交換なんてできる気がしないし、失敗するのはイヤ!と思っちゃいますよね。
でも大丈夫。そんなアナタのために、必ずできるBB交換方法と、実際の現場で起こることの多いトラブルへの対処方法をわかりやすくお伝えします。
今回の後編は3分くらいで読めますし、ご自分で自転車を整備する際にきっと役に立ちますので、ぜひご一読を!
前回のおさらい
中古で購入したクロスバイク「ルイガノTR2」をリフレッシュする作業の中で、ボトムブラケット(BB)の動きが渋すぎることに気づいたボク。
せっかくやってきた子なので、ちゃんと乗れるようにしてあげようと、BBを新品に交換することを決意。
新しいBBを注文しなくちゃいけないけど、BBにはいろんな種類とサイズがあるので、それが分からないと注文できませぬ。スクエアテーパーカートリッジBBということだけは分かってます。
BB本体に種類サイズが表示されているはずなので、まずは今付いてるBBを車体から取り外そう。
取り外すために必要なものは次の三つで、すでに用意はできております。
- BBツール
- モンキーレンチ
- 作業手袋
さあ、BBを取り外すよ! ← 今ここ。
BBを取り外すときの回す方向に注意してね
ではBB取り外し作業の本番開始ですが、ここで注意しなくてはいけないのが、BBを取り外すときの回す方向です。
「ん?回して外すのなら、ネジといっしょで反時計回りに回せばいいんでしょ?」
と思われたアナタ。おめでとうございます。半分だけ合ってます。
正解は、
- 左側は正ネジ(ふつうのネジと同じ)
- 右側は逆ネジ(ふつうのネジと逆)
です。
BBの左側は反時計回りに回して外します。
BBの右側は時計回りに回して外します。
少なくともボクがこれまで触れてきた自転車はすべてそうでした。
BBの規格によっては右側が時計回しではないものも
これまでの案内は「JIS規格」に従った製品の場合でして、他にイタリアン規格とかフレンチ規格とかがあって、それらはちょっと違うらしいです。でもややこしいのでここでは割愛。
詳しく知りたい方は、サイクルベースあさひさんのWebメンテナンス講座がおすすめです。めっちゃ詳しくてわかりやすいです。
左側は楽勝、右側は大苦戦
では実際にBBを外してみましょうね。
少しばかり力がいりましたが、さほど苦労することなくBBが外れました。よかった。
ちなみに右手でシャッターを押しているので、右手が写真に写っていませんね。
本来は、片方の手でモンキーを、もう一つの手でBBツールをホールドするようにお願いします。
・・・ぜんぜん回りません。
力をこめてもうんともすんとも言いません。もちろんBBがうんとかすんとか言いはしませんが。
ここでいろんな思いが、さほどスペースがあるわけでもない脳内を駆け巡ります。
- ほんとに逆ネジの時計回りで合ってる?
- イタリアンとか例外扱いで正ネジで反時計回りと違う?
- 10年の間に固着してしまってて一生外せないってことはない?
- ネジロック剤とかでガチガチに固めてあるとかない?
- これは自転車屋さんに持って行くしかない?
- 近所の街の自転車屋には以前断られてイヤな思いしたなあ・・
いやー困りました(汗)
業務用浸透防錆潤滑剤「ラスペネ」登場
でも大丈夫。ボクには力強い味方がいるのです。それがこの「業務用ラスペネC」。
- メーカーさんの説明書きを要約しますと、
- フッ素とかで浸透力と防錆性がすごい。
- どんな角度でもばっちり噴射できる。
- 水置換性とかで水に濡れてても大丈夫。
- 業務用ということはプロ仕様ということ。
ということです。なんだかめっちゃ効果ありそうでステキです。大むかしからあるCRC5-56とどう違うのか、今ひとつわかりませんが、きっとスゴイのでしょう。
ただこういう、染み込ませて動きを良くする潤滑スプレーとしては、良い評判しか聞きません。ちょっと高いですけどね。
こうやってフレームとBBのすき間にラスペネCを吹き付けます。
そして待つこと10分(10分というのは適当)
BB右側をみごと取り外すことに成功しました。ラスペネする前はまるで回る気配ゼロだったのが、「くくっ」と力を入れると「すかっ」と回りました。うれしい。
BBとフレーム(BBシェル)とのすき間にラスペネがしっかり浸透して、固着を取り除いてくれたということなのでしょう。
CRC5-56でやっても同じ結果だったんじゃないの?などということは、決して口にしてはいけません。ラスペネC、高かったんですから。
【参考】ラスペネでも回せないときはテコの原理で
今回はラスペネのおかげでBBを回すことに成功しましたが、それでも回らないときってあるんです。しっかり経験ずみです。
そんなときは「テコの原理」を使います。いわゆる、
- 支点
- 力点
- 作用点
というやつです。よけいにわかりにくいかもです(笑)
ようするに、今回でいうとモンキースパナの持ち手の部分を長くして力を加えると、短いときよりも大きな力を加えることができるという方法です。
ボクも以前BBがどうしても回らずに困り果てたときに、ふと思いついてこの方法を使ってみたら、一発で回すことに成功しました。
注意点があるとしたら、長い持ち手をぐいっと押しながらBBツールをホールドするのは、無理があるので、どなたかにヘルプをお願いするのがいいです。
ちなみに今回は、折りたたみ自転車「ダホン スピード」のシートポストに、モンキーレンチを差し込んでみました。以前もこの方法で大勝利したもので。
以上、テコの原理の参考情報でした。
BBのシェル幅と軸長に注意して
奮闘のすえ、取り外すことに成功したBBです。10年前のものと考えると外観は以外とキレイですね。中はグリスが無くなってスカスカになってるとは思いますが。
- メーカー=「CHINHAUR?」しりませぬ。
- BBが収まるフレーム側のBBを収める場所(シェル)の幅=68mm。
- 軸の端から端まで=111mm。
ということで、交換するための新しいBBは、
- シェル幅=68mm
- 軸長=111mm
- メーカーはどこでも。
を基準に選ぶことにします。
いろいろ探した結果、サイズとお値段の総合的判断でこのBBを選びました。
写真は軸長115mmの製品ですが、実際に購入したのは軸長110.5mmのものです。
元から付いていたBBは軸長111mmですが、0.5mmくらいの差はどうってことなかろうと思いまして。とっても安かったんです。
新しいBBをシェルに装着します
それでは最後の仕上げです。
- BBを収めるスペース(BBシェル)をキレイにする。
- BBの左右のネジ部分(BBワン)にグリスたっぷり。
- まず右側をセットして次に左もセット。
ということで、なんとかBBの交換がコンプリートしました。
さっそく軸を回してみると、気持ちよく「にゅるにゅるクルクル」回ってくれます。もう以前の「かさかさズリズリ」には戻れません。うれしいです。
まとめ
というわけで今回は、回転が渋すぎるボトムブラケット(BB)を新しいBBの交換する流れの実例の後編をご紹介しました。
最後にまとめます。
BBを取り外すときの回す方向に注意して
⇒BBの左側は反時計回りに回してはずします。
⇒BBの右側は時計回りに回してはずします。
⇒BBの規格によっていは右側が時計回りではないものがあるので注意。
BBが簡単に外れない場合の対処方法
⇒浸透防錆潤滑剤「ラスペネ」なとを使って固着をゆるめる。
⇒テコの原理を使ってさらに力が入りやすく工夫する。
新しいBBをシェルに装着
⇒BBシェルをキレイにする。
⇒BBワンにグリスを塗る。
⇒先に右をセットして次に左をセット。
ようするに、
くたびれたBBを新しいものに交換することで、「にゅるにゅるクルクル」な回転を復活させることができる。
BBを交換するときは、シェル幅と軸長に注意して。
ということです。
どんどんご自分で自転車に手を入れて、お気に入りのマイ自転車に育てていきましょう!